今日ご紹介させていただくのは、フランスの作家カミュによる、1947年に発表された「ペスト」です。
コロナ禍に入ってから話題になったこちらの作品、気になって読んでみた方も多かったのではないでしょうか?
実際にコロナが始まった時期に100万部以上のベストセラーになったそうです。
私もコロナで世界が混乱し始めた頃、人々がどのように思考し、行動するのか、気になって読んでみました。
あらすじと、実際に読んでみての感想をお伝えさせていただきます。
あらすじ
舞台はカミュの故郷でもあるフランス領アルジェリアオラン市。ある日、医師のリウーは1匹のネズミの死骸を見つけます。
ネズミの死骸は日毎に増えていき、それはペスト流行の発端となりました。
ペスト感染者数と死者数は増えていき、最初はこのパンデミックを軽視していた当局も、事態の深刻さに気づいて対応に追われていきます。
街がロックダウンされ、生活必需品の価格が高騰する中で、市民は混乱をきわめていきます。
その中で脱出を試みる者、愛する人のために街に残る選択をする者、ペストによって命を落とす者、さまざまな人間模様を垣間見ることができます。
感想
社会が混乱に陥っている時、自分はどのように考え、行動していくべきか。その指針を示してくれたのがカミュのペストでした。
どんな出来事にも光と闇があり、表裏があります。
コロナのパンデミックも、ロックダウンも、それによって必ず得をする人がいます。
たとえ不条理に思えることでも、その出来事をいかに捉えるかは自分次第であり、その捉え方によって、起こる出来事はいかようにも意味づけできます。
コロナパンデミックでは、自分がたとえ死ぬかもしれない恐れの中でも、医療の最前線で戦う医療従事者の方々が多くいらっしゃいました。
自分が同じ立場に立たされた時、果たして彼らと同じように戦えるだろうか?と思うと、自信がありません。
愛する家族や自分の命を優先したくなるのが人間の本心だと思います。
しかしパンデミックの中では、家族や自分の命を優先することは、時に社会的な「正義」に反することにもなりかねません。
実際、世界中の都市がロックダウンされた時期に海外から帰国した人たちには、多くの批判が浴びさせられました。
彼らにとっては自分や家族の命を守るが故の選択だったことでしょう。
また、社会のための正義を選択した結果、命を奪われてしまった人もいます。
その人にとって、正義のための選択は正しかったのでしょうか?
答えは本人のみぞ知ることでしょう。
社会的な混乱によって踊らされる人がいれば、混乱を利用する人もいたり、その混乱に意味を見出そうとする人がいて、さまざまな感情が渦巻くようになります。
恐れの中で平常心を保つことは簡単なことではありません。
しかしこのカミュのペストを読むことによって、社会の混乱を俯瞰的かつ中立的な視点で見つめられるようになると思います。
コロナが収束しても、今後も何かしらの社会的混乱が起こった時は、「ペスト」からの学びを活かしていこうと思います。
・ジョセフ・グラン リウーの友人、手帳でこのストーリーを語る
・レイモン・ランベール 市からの脱出を試みる新聞記者
・コタール パンデミックを利用する犯罪者(密売人)
・パヌルー キリスト教の神父
・ジョゼフ・グラン 小説家志望の役人