「真夜中のカーボーイ」あらすじと感想、ネタバレあり 現実の厳しさを突きつけられ、前を向いて生きていこうと思える映画

私が今まで観た中で5本の指に入る大好きなアメリカ映画「真夜中のカーボーイ」をご紹介します。アカデミー賞を受賞したこちらの作品、西原理恵子さんがお勧めしていたことがきっかけで観てみました。

1969年に公開されたこの映画、富と名声を得るためにテキサスの田舎からニューヨークに出てきた一人の男と、そこで出会う貧乏な男とのリアルな物語です。

1970年前後のアメリカの空気感を楽しめるだけではなく、貧困や病気と苦しみながらも夢を叶えるため泥臭く生きていく二人の男たちから勇気をもらえる作品です。

「真夜中のカーボーイ」の登場人物

・ジョー・バック(ジョン・ヴォイト)
テキサスで皿洗いの仕事をしていたが、男娼として稼ぐためにニューヨークに出てくる。

・ラッツォ(ダスティン・ホフマン)
ニューヨークで暮らす貧困暮らしの男。ジョーに売春斡旋人を紹介すると言って近づく。紹介した男はゲイでジョーに問い詰められるが、その後、ジョーの仕事に協力する。ジョーと仲良くなるに連れて病気が悪化する。

・キャス(シルヴィア・マイルズ)
ジョーがニューヨークで出会った娼婦。一夜を共にしたジョーにお金を要求されるが、逆にジョーからお金をふんだくる。

・シャーリー(ブレンダ・ヴァッカロ)
ジョーがアートイベントで出会った社交界の名士の女性。最初、ジョーは彼女に対して性的に応じることができなかったが、彼女が言葉遊びのゲームをプレイし、ジョーにゲイではないかと示唆すると、ジョーは突然、彼女に応じることができるようになった。

「真夜中のカーボーイ」のあらすじ(ネタバレあり)

テキサスの田舎で皿洗いをしていたジョーは、男娼になって稼ぐためニューヨークに出てきます。

街で女性に声をかけ、最初は失敗していましたが、中年女性キャスに声をかけて、彼女の豪華なアパートで一夜を共にすることに成功。翌朝、ジョーは彼女にお金を請求しますが、逆に彼女から高いお金をふんだくられてしまいます。実は高級娼婦だった彼女の方がうわてでした。

その後ジョーは、足を引きずった小柄な男、ラッツォに出会います。ラッツォはジョーに売春斡旋人を紹介しますが、ラッツォが紹介した男は男色でした。騙されたジョーはラッツォを見つけて問い詰めますが、すでにラッツォの手元にはお金がありませんでした。

罪滅ぼしのためにラッツォは、彼が寝どころにしてある廃墟のアパートで一緒に住むこと、男娼の仕事に協力することをジョーに提案します。

ジョーはしぶしぶ了承し、ラッツォとビジネスパートナー関係になります。

仕事を通じてジョーとラッツォはだんだん絆を深めていきます。

ラッツォはマイアミに引っ越し、ビーチで女性に囲まれてのんびりと暮らすことを夢見ていました。

しかし二人の友情関係が深まるに連れ、もともと病気であったラッツォの体調がさらに悪化していきます。

ある日、ジョーはアンディ・ウォーホル風のアートイベントパーティーに招待され、ラッツォと二人で出席します。ラッツォの健康状態の悪さと不潔感は他の客からひんしゅくを買いますが、ジョーはそのイベントで出会った社交界の名士の女性シャーリーを誘い出すことに成功します。

ラッツォはシャーリーにジョーが男娼であることを伝え、お金を払うことを承諾させます。

しかしシャーリーとベッドを共にしたジョーは、シャーリーに対して性的に応じることができませんでした。

ベッドの上でサイコロワードゲームを始めたシャーリーは、ワードの組み合わせによって、ジョーがゲイであることを示唆します。それによってジョーは急に奮い立ち、シャーリーに応じることができるようになりました。

翌朝、シャーリーはジョーにお金を払い、さらに友人を紹介してくれました。

そのようにしてジョーの男娼事業がうまくいき始めたと思った矢先に、ラッツォの病状が悪化します。

ラッツォは病院での治療を拒否し、ジョーにフロリダ行きのバスに乗せて欲しいと頼みます。ジョーはラッツォのマイアミへ引っ越す夢を叶えてあげたいと思います。

ジョーは必死になってアミューズメント施設でゲイの男を拾い、ホテルの部屋で男を強く殴って、気絶した(もしくは亡くなった)男から金を奪います。

男から奪った金でバスの切符を買い、ジョーとラッツォはマイアミ行きのバスに乗ることができました。

バスの中でラッツォの健康状態はさらに悪化し、失禁します。

ジョーは途中でラッツォと自分のために新しいリゾート用の服を購入し、自分の着ていたカウボーイの服を捨てて、ラッツォを着替えさせます。

ジョーはバスの中で、マイアミへ行ったら男娼ではなく、安定した仕事を見つけるつもりだとラッツォに話します。

しかしラッツォから返事はありませんでした。気づいた時にはラッツォはマイアミ行きのバスの中ですでに息絶えていました。

「真夜中のカーボーイ」の感想

ジョン・ヴォイトとダスティン・ホフマンが演じるこの映画。ちなみにジョン・ヴォイトはアンジェリーナ・ジョリーのお父さんです。

この映画をお勧めされていた西原理恵子さんいわく、

「愛と正義がまったく勝たないこれらの映画の結末がとても腑に落ちました。いい意味での諦めを教わったし、現実を描くことの面白さにも気付けました。」

とのこと。生きていくことは綺麗事ではなく、お金が必要で、そういった現実を突きつけられる作品です。

貧困に病気、犯罪と、ネガティブな出来事が続く中で育まれていく、ジョーとラッツォの友情関係には心が温かくなります。

そして何よりもダスティン・ホフマンの演技力の凄さに圧倒されました。甘いマスクのダスティン・ホフマンが、貧乏で不潔な浮浪者を演じたことに、当時は戸惑いの声もあったようです。しかし彼の演技力なくしてこの映画は成り立たないと言えるでしょう。

ラストシーンのラッツォのまばたきをしない時間の長さに、私は一番驚きました。

貧困や病気と闘ってきたラッツォ、人生の最期は無償の愛を与えてくれる友人ジョーに恵まれ、孤独を感じずに終えられたのではないかと思います。

R指定された暴力シーンもあり、目を覆いたくなるようなリアルな現実を描いたストーリーですが、観た後は「辛いことがあっても頑張って生きよう」と勇気づけられる作品です。

真夜中のカーボーイの配信はGYAO!でも視聴できます。

真夜中のカーボーイの視聴はこちら

 

Ayacoライター
アラフォー独身おひとり様女。10代の時、世界文学を読み漁るうちに、日本の学校教育で教わる生き方との矛盾を感じる。進路に悩み、高校の普通科を1年で中退。 通信制高校に編入し、同時に大検(現在の高卒認定資格)を取得して美大へ入学。在学中にフリーランスのグラフィックデザイナーとして起業。その後、Web制作会社でディレクターとして勤務後、大手広告会社のライターを経て2度目の起業。 30代半ばに、美大へ進学するきっかけとなった、印象派時代のフランスの画家達が過ごした聖地を旅する。 地方在住のアラフォーになり、コロナ禍をきっかけに、学生時代からの夢であった、知的探究心の向くままに世界の文学に触れる日々を過ごしている。 オフィシャルサイトはこちら
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アラフォー独身おひとり様女。10代の時、世界文学を読み漁るうちに、日本の学校教育で教わる生き方との矛盾を感じる。進路に悩み、高校の普通科を1年で中退。 通信制高校に編入し、同時に大検(現在の高卒認定資格)を取得して美大へ入学。在学中にフリーランスのグラフィックデザイナーとして起業。その後、Web制作会社でディレクターとして勤務後、大手広告会社のライターを経て2度目の起業。 30代半ばに、美大へ進学するきっかけとなった、印象派時代のフランスの画家達が過ごした聖地を旅する。 地方在住のアラフォーになり、コロナ禍をきっかけに、学生時代からの夢であった、知的探究心の向くままに世界の文学に触れる日々を過ごしている。 オフィシャルサイトはこちら