映画「アイネクライネナハトムジーク」あらすじと感想、ネタバレあり 緻密な計算と伏線による数学のようなストーリー

主演の三浦春馬さんが観たくてレンタルしたこの映画。オール仙台ロケで、仙台の魅力とともにストーリーを楽しむことができます。個人的には予想以上にお気に入りにの一本になったのでご紹介させていただこうと思います。

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音楽について

この映画を語る上で欠かせないのが、主題歌の「ベリーベリーストロング」です。

この曲は、映画の原作者でもある伊坂幸太郎さんの小説集「アイネクライネナハトムジーク」の「アイネクライネ」の文章から、斉藤和義さんが作られた曲です。

斉藤和義さんが好きな私は、先にこの曲を何度も聴いていました。リリースされた時から7年以上にわたって聴いていた曲なので、ずっと頭に思い描いていた歌詞のストーリーを初めて映像で観て感動したのを覚えています。

そのような意味でも、三浦春馬さんの名演技と併せてお勧めしたい映画です。

 

「アイネクライネナハトムジーク」の登場人物

・佐藤(三浦春馬)
マーケティングリサーチ会社で働く主人公のサラリーマン。上司(藤間)がパソコンを蹴っ飛ばしてサーバのデータを吹っ飛ばした責任を取って、街頭でアンケート調査をしていたところ、未来の恋人となり紗季と出会う。

・本間紗季(多部未華子)
仙台駅前でアンケートを依頼してきた佐藤と出会う。フリーターとして、工事現場での交通誘導員などのアルバイトをした後、10年後には美緒や亜美子の通う塾の受付事務を行う。

・美奈子(貫地谷しほり)
美容師で佐藤たちの大学の同級生。常連客の香澄に弟のウィンストン小野を紹介され、交際を開始する。

・藤間(原田泰造)
佐藤の上司。妻に出ていかれる。佐藤から結婚生活について聞かれたことで、ヤケになってパソコンを蹴っ飛ばし、サーバ内の大事なデータを飛ばしてしまう。妻とは落としたハンカチを拾ったことがきっかけで出会った。

・ウィンストン小野(成田瑛基)
プロボクサー。ヘビー級タイトルマッチで日本人初の世界チャンピオンとなる。美奈子には最初、職業を隠していたが、世界チャンピオンになったことで正体を明かして美奈子と交際を開始。

・板橋香澄(MEGUMI)
美奈子が働く美容室の常連客で、美奈子に弟のウィンストン小野を紹介する。

・織田一馬(矢本悠馬)
佐藤の大学の同級生。学生時代に皆のマドンナであった由美との間に子供ができ、子供ができたと分かったらすぐに大学を中退して居酒屋で働き始めて、のちに店長となる。

・織田由美(森絵梨佳)
佐藤や美奈子の大学の同級生で一馬の妻。

・織田美緒(恒松祐里)
一馬と由美の娘。幼児の頃から佐藤のことを呼び捨てで呼ぶ。生意気で正義感の強い性格。思春期になってから父親を毛嫌いするが、佐藤から自分が母のお腹の中にいた時の話を聞かされて父に対する見方が変わる。駐輪場で違法駐輪をする犯人を捕まえるために、父親が怖い人と噂されている同級生の久留米和人を誘う。

・斉藤さん(こだまたいち)
仙台駅前の路上で歌うミュージシャン。

・亜美子(八木優希)
藤間の別れた妻との間にできた娘で、織田美緒の親友。父親の藤間が佐藤にお願いして書いてもらったウインストン小野のサインを持っている。美緒と、美緒の父親の一馬と共に、ウィンストン小野の試合を観戦する。

・久留米和人(萩原利久)
美緒の同級生で美緒のことが気になる。「社会の歯車」として働く父親を軽蔑し、父のようになりたくないと思うが、駐輪場で機転を利かせて美緒を助けた父のことを尊敬するようになる。

・久留米邦彦(柳憂怜)
和人の父。家族で食事中も取引先の電話に対応し、レストランで注文と違ったものが出てきても何も言わない優しい性格。駐輪場で美緒と和人が男とトラブルになっている現場に出くわし、持ち前の交渉術で、男を大人しく退散させることに成功する。

・久留米マリ子(濱田マリ)
邦彦の妻で和人の母。「社会の歯車になりたくない」と言う和人に、結局は歯車としてしか生きていけないことを諭す。

・少年(中川翼)
佐藤が織田一馬の家に行く途中の公園で、上級生数人にいじめられていた。耳が不自由。織田達と共に駆けつけてきたウィンストン小野に励まされ、ファンになる。

・女子高生(祷キララ)
佐藤に助けられた耳の不自由な少年の姉。

・青年(藤原季節)
耳の不自由な少年の10年後。試合に負けそうなウィンストン小野を客席から励ます。

・セコンド(サンドウィッチマン)
ウィンストン小野をリングサイドでサポートする。

「アイネクライネナハトムジーク」のあらすじ(ネタバレあり)

美容師の美奈子は常連客の香澄に弟を紹介される。

弟は最初、美奈子に自分は事務員だと告げて、しばらく電話のみでやり取りを続けるが、ある日、美奈子に「しばらく仕事が忙しくなるから連絡が取れない」と伝える。

実は彼はプロボクサーのウィンストン小野で、ヘビー級タイトルマッチで世界チャンピオンになったら美奈子に告白しようと決めていた。

同じ頃、マーケティングリサーチ会社に勤める佐藤は、昨日妻が出ていったばかりの上司の藤間にうっかり失言をしてしまい、藤間はヤケになってパソコンを蹴飛ばし大事なデータを飛ばしてしまう。その後、藤間はしばらく休職する。

データを飛ばした責任を取るために佐藤は駅前でアンケート調査を行う。その時にフリーターの紗季と出会い、アンケート調査をお願いする。紗季の手に「シャンプー」と書いてあり、それを何気なく読んで「シャンプー」と佐藤はつぶやく。紗季は「今日、安いんですよ。忘れないように」と笑う。そのことがきっかけで佐藤は紗季のことが気になる。駅前のスクリーンにはヘビー級タイトルマッチの様子が放映されていた。

後日、結婚式へ向かった帰りに、佐藤は交通誘導員のアルバイトをしていた紗季と再会し、プレゼントを渡して急接近する。

晴れて世界チャンピオンになった時、美奈子は香澄から電話で、彼がウィンストン小野であることを知らされる。

その後、二人は交際を開始。美奈子は大学の同級生で夫婦となった織田一馬と由美夫妻が二人の子どもたちと暮らす家で、ウィンストン小野を紹介する。

同じく大学の同級生である佐藤も、ウィンストン小野と会うために織田の家へ向かう。

その途中の公園で、上級生にいじめられている少年を見つける。

少年を助けた佐藤は、その場で織田一馬に連絡し、一馬とウィンストン小野が公園に駆けつける。

ウィンストン小野はいじめられていた耳の不自由な少年を励まし、少年はウィンストン小野のファンになる。

10年後、織田一馬と由美の娘である美緒は高校生になっていた。

美緒のことが気になる同級生の和人は、美緒から「駐輪場で違法駐輪をしている犯人を捕まえに行こう」と誘われる。その理由は、和人の父親が怖いからだと同級生の男子から聞かされていたことだった。

しかし実際の和人の父親は、家族で外食中にも取引先の電話に対応し、注文した料理と違ったものが出てきても文句を言わない性格で、和人はそんな父親のことが尊敬できずにいた。

美緒が駐輪場で違法駐輪の犯人を捕まえた時、美緒はその男に絡まれる。和人は男に張り倒されて倒れ込むが、そこにたまたま和人の父、邦彦が通りかかる。

邦彦は男に「そのお嬢さん誰の娘さんかご存知でそんなことを言っているのですか?知らないなら命知らずだなと思いまして」と言うと、男は何も言わずに退散して行った。

持ち前の交渉術で機転を利かせた父親を、和人は尊敬するようになる。

美緒の父親である一馬は、居酒屋の店長をしている普通の人で、美緒は思春期の少女らしく、父親のだらしなさに嫌悪感を抱いていた。

父親の一馬からウィンストン小野が出るボクシングの試合に誘われるも、美緒は断る。

しかしその後、偶然美緒は街で父親の大学の同級生である佐藤に再会する。

アイスクリーム屋でアイスを食べながら、佐藤から、母の由美が美緒を身籠った時、父の一馬はすぐに大学を中退して居酒屋で働き始めたことを伝えられ、美緒は父親を見直す。

そして美緒は、ウィンストン小野のファンである親友の亜美(藤間の娘)とタイトルマッチを観戦する。

ウィンストン小野は負けそうになるが、その彼をリングで励ましたのは、10年前に公園で励ました耳の聞こえない少年であった。

大人になった少年の励ましの甲斐あってウィンストン小野は勝利する。

佐藤は10年一緒に暮らした紗季にプロポーズをするが、失敗をして、紗季は家を出て行ってしまう。

その後、佐藤はバスに乗る紗季を見つけてバスを追いかける。途中で佐藤は小さな子供を助ける。その様子をバスの車内から見ていた紗季は、佐藤と暮らしていた家に戻り、佐藤に「いいですよ、結婚」と伝えて、あらためてプロポーズを受け入れる。

「アイネクライネナハトムジーク」の感想

三浦春馬さんが亡くなられてしばらくしてから、彼の生きた証を観ようと思ってレンタルした作品のうちの一つです。

すると、ストーリーが、私が大好きな斉藤和義さんの「ベリーベリーストロング」の歌詞と同じで驚き、そして歓喜しました。

ずっと歌詞からイメージしていたストーリーが映像化されていたので、ずっと会いたかった人に初めて会えたような、そんな感動もあり、この映画を取り上げさせていただこうと思いました。

「劇的な出会い」をテーマにしたこのストーリーは、登場人物が多く、また、10年という時系列でそれぞれの人物の日常を追っています。

この「アイネクライネナハトムジーク」の原作は、伊坂幸太郎さんの連作短編集で、それぞれの物語が緻密な計算によってつながっており、あらゆるところに伏線が張られています。

登場人物が多く、それぞれの視点からシーンを切り取っている技法は、私の大好きなエミール・ゾラの小説や、江國香織さんの「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」にも通じています。

「小説を書くことは、数学である」と感じさせる、理系脳の人が書いた作品は読み応えがあります。

個人的にお気に入りのシーンは、後半で和人のお父さんが駐輪場で違法駐輪の男を撃退させるシーンです。

「人にヘコヘコ頭を下げる父親のようにはなりたくない」と父親を見下していた和人ですが、理性的かつ穏便にトラブルを解決させる父親を見直し、そして社会の現実を知ったのでしょう。

また、同じく父親を毛嫌いしていた美緒も、父親の大学の同級生である佐藤から昔話(美緒の妊娠が分かったらすぐに大学を中退して居酒屋で働き始めたこと)を聞かされ、父親に対する見方が変わっています。

それぞれ別の方法で親の偉大さを知る二人の若者から、いくつものメッセージを読み取ることができました。

そして何よりも三浦春馬さんの自然かつストイックな演技は、この映画の一番の見どころです。

素晴らしい作品を遺してくださった三浦春馬さんに感謝です。

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Ayacoライター
アラフォー独身おひとり様女。10代の時、世界文学を読み漁るうちに、日本の学校教育で教わる生き方との矛盾を感じる。進路に悩み、高校の普通科を1年で中退。 通信制高校に編入し、同時に大検(現在の高卒認定資格)を取得して美大へ入学。在学中にフリーランスのグラフィックデザイナーとして起業。その後、Web制作会社でディレクターとして勤務後、大手広告会社のライターを経て2度目の起業。 30代半ばに、美大へ進学するきっかけとなった、印象派時代のフランスの画家達が過ごした聖地を旅する。 地方在住のアラフォーになり、コロナ禍をきっかけに、学生時代からの夢であった、知的探究心の向くままに世界の文学に触れる日々を過ごしている。 オフィシャルサイトはこちら
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Ayacoライター
アラフォー独身おひとり様女。10代の時、世界文学を読み漁るうちに、日本の学校教育で教わる生き方との矛盾を感じる。進路に悩み、高校の普通科を1年で中退。 通信制高校に編入し、同時に大検(現在の高卒認定資格)を取得して美大へ入学。在学中にフリーランスのグラフィックデザイナーとして起業。その後、Web制作会社でディレクターとして勤務後、大手広告会社のライターを経て2度目の起業。 30代半ばに、美大へ進学するきっかけとなった、印象派時代のフランスの画家達が過ごした聖地を旅する。 地方在住のアラフォーになり、コロナ禍をきっかけに、学生時代からの夢であった、知的探究心の向くままに世界の文学に触れる日々を過ごしている。 オフィシャルサイトはこちら