今回ご紹介させていただくのは、フランスの作家フランソワーズ・サガンの「ある微笑」です。
「悲しみよこんにちは」で、齢18歳にして華々しい文壇デビューを飾ったサガン。
多くの人が次作を期待する中、プレッシャーと戦いながら執筆したと思われるのがこの「ある微笑」です。
女子大生が同級生の彼氏の叔父(既婚者)と不倫をする、まるで昼ドラのような恋物語。
しかしサガンの手にかかれば、一見、泥沼なストーリーも、みずみずしく熟していく甘酸っぱい果物のような小説になるのが不思議です。
目次
著者フランソワーズ・サガンのプロフィール
1935年6月21日、母方の家族が住んでいるロットのカジャルクに生まれる。父親は大手電気会社の重役、母親は地主というブルジョワ家庭て育った。
1939年〜1945年の第二次世界大戦中、一家はリヨンに住み、その後、ドーフィネ地方ヴェルコールに住む。
戦後、家族はパリの自宅に戻る。「キキ」の愛称で呼ばれていたサガンは学校生活になじめず、3ヶ月で退学となる。その後、寄宿学校に入れられ、その後も転校を繰り返した後、2度目の受験でバカロレア(フランスの高等学校教育の修了を認証する国家試験)に合格し、ソルボンヌ大学へ入学。在学中に執筆した「悲しみよ、こんにちは」で小説家デビューする。
処女作が大きな話題となったため、サガンが大きな重圧と闘いながら執筆した二作目の「ある微笑」は、「悲しみよ、こんにちは」よりも増した絶賛を一流批評家たちから受ける。
「ある微笑」の登場人物
・ドミニック
ソルボンヌ大学に通う20歳の女性大生。同級生のベルトランという彼氏がいるが、ベルトランの叔父である四十男のリュックに惹かれ、不倫関係になる。
・ベルトラン
ドミニックの同級生。叔父夫妻をドミニックに紹介するが、そのことが原因で思ってもいなかった形でドミニックに裏切られてしまう。
・カテリーヌ
ドミニックの大学の同級生。 恋愛体質。ドミニックを無防備な人間のように取り扱う。
・リュック
ベルトランの叔父。旅行家。ドミニックと快楽だけのアバンチュールを楽しむ。
・フランソワーズ
リュックの妻。母性に溢れている女性。
「ある微笑」のあらすじ
ソルボンヌ大学に通う20歳のドミニックは、ボーイフレンドのベルトランにカフェで旅行家の叔父リュックを紹介されます。
その後、ドミニックとベルトランは、リュックと妻のフランソワーズが住む家に招かれます。
ドミニックと二人きりになったリュックは、ドミニックに愛人にならないかと声をかけます。
一方でフランソワーズはリュックと洋服屋へ行ってドミニックに高価なウールのコートを買ってあげたりと、何かと親切にしてくれます。
ドミニックは危険なアバンチュールと知りながらも、リュックと南仏カンヌで2週間を共にします。
しかしそのことはやがてリュックの友人によって、リュックの妻フランソワーズに知られることになります。
「ある微笑」の感想と考察
映画版もあわせて観て感じたのは、これ、日本での出来事だったら炎上必至のストーリーだなと感じました。いわゆる、甥っ子の彼女(女子大生)に手を出す中年の既婚エロオヤジの物語だからです。
作者が若い女性だからまだ良いにしても、もし中年男性作家が書いたストーリーなら、日本のフェミニストさんに袋叩きにされそうです。
日本人の感覚だと下世話なストーリーでも、舞台となっている1950年代のオシャレなパリと、サガンの独特の文体により、とても文学的で洗練された作品になっています。
素敵な大人の男性とのアバンチュールは、自分の知らない世界に連れて行ってくれるかもしれないので、若い女性なら一度は憧れるかもしれません。
小説を読んでいるうちに、自分も恐れ知らずの無防備な二十歳前後の女の子の気分になれます。
しかし私が中年男リュックの年齢になって分かるのは、既婚で二十歳前後の女性に手を出す中年男にロクな男はいない、ということ。ましてや甥っ子の彼女に手を出すなんて、ク○の極みと言えます。
結果的に夫の浮気を知ることになった妻フランソワーズの大人な対応は、精神的に自立して成熟したフランス人女性のイメージにピッタリでした。
小説版ではフランソワーズはふくよかな女性に描かれていますが、映画版ではスラッとしたとても美しい女優さんでした。
フランソワーズ役の女優ジョーン・フォンテインさんが日本生まれだということがなんだか嬉しかったです。
若い女性ならでの危険なアバンチュールを想像してドキドキしたい方はぜひ、映画とあわせて楽しんでみてください。
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