職場や家族、学校での人間関係でお悩みのある方に最もお勧めしたいのが、アメリカでベストセラーとなった「自分の小さな『箱』から脱出する方法」という本です。
初めて読んだ時に大きな衝撃を受け、その後も人生の節目で何度か読み返しています。
もっと早くから「箱の法則」を知っておけば良かった、と思います。
人生を快適に生きるために必読の一冊ですので、ぜひ読んでみてください。
この記事では本書から学べるエッセンスをご紹介していきます。
目次
著者プロフィール
この書籍の著者はアービンジャー・インスティチュート(英: Arbinger Institute)という国際研究機関です。
世界20ヶ国以上に支部を持ち、企業や個人に対して、トレーニング、コンサルティング、コーチングを行なっています。
日本支部の公式サイトには以下のように記載されています。
1970年代、テリーワーナー博士率いる研究者チームは人間科学分野における非常にコアな問題を研究対象としていました。それは、Self-Deception(自己欺瞞)と呼ばれるものです。そして、この研究によって、どうして我々は自分では気づかないうちに問題を引き起こし、周囲の人々から抵抗をうけるのか、その本質を明らかにしました。それは、人間のモチベーションを理解するうえで、とても革新的な発見でした。行動に対して、強力にそして長く影響を与えるマインドセットに注目したのです。
アービンジャー(Arbinger)は1979年に設立されました。それ以来、多数の個人や組織の意識改革や生産性向上の問題に取り組んできました。
「自分の小さな『箱』から脱出する方法」を読んでの気づきと学び
ここでは、本書から学べるポイントをお伝えさせていただきます。
「箱」とは何か?
人間関係は自分が箱に入っているか入っていないかで決まります。
箱に入っている状態とは、自分が他人を、自分のフィルターを通した目で見ること。
箱=相手を見る自分のフィルター です。
箱に入っていると、他人を一人の人間として見ておらず、脅威や恐れの対象として見てしまいがちです。
一方で箱に入っていない場合は、他人を自分のフィルターを通さず、ありのままの一人の人間として見ることができます。
自分が箱に入っていると人間関係はどうなるか
自分は相手をどのように見ているのか?
自分のフィルターを通して見ていると、相手もそれを察知します。
たとえばあなたの職場にAさんという先輩がいたとします。
Aさんのことを「怖い人だな」「要注意人物」と思っていたら、たとえ無意識であっても、それがAさんに伝わってしまいます。
するとAさんとの関係がギクシャクしてしまい、Aさんもあなたのことを恐れの対象として見てしまう可能性が高いです。
一方、あなたがAさんを自分のフィルターを通さず、ありのままを知ろうと接したら、Aさんもあなたに心を開いてくれやすくなるでしょう。
過去に人間関係のトラウマがある方、たとえば学校でいじめられていたり、毒親育ちの方は、他人を脅威に感じてしまい、最初から箱に入ってしまいがちです。
すると、周囲の人もあなたに心を開いてもらえないと感じ、あなたを腫れ物のように扱う可能性が高いです。
そのようにして人間関係がこじれると、さらに人間不信になってしまうでしょう。
相手を一人の人間と認識して、ありのままを知ろうとすること。
それが箱から脱出する第一歩です。
箱に入ってしまう原因
なぜ、人は箱に入ってしまうのか?
そのきっかけとなる原因は、自分への裏切りです。
自分への裏切りとは、自分が他の人にすべきだと思った行動に背くことです。
たとえばあなたが電車に乗っていて、二人がけの席の隣が空いていたとします。
隣に座りたそうな人が来ましたが、あなたは「隣に人が来たら面倒くさいな」と思い、荷物を置いて、来る人を妨げます。
本当は荷物を置いてはいけないと分かっていますが、隣に人が来てほしくないからそのような行動を取ってしまいます。
その他の例を挙げるなら、自分ではいけないと分かっていながらも、他の人に不義理をしてしまったり、連絡を怠っていたり。
そのような「自分の感情に背く」行動が重なると、そのようなことをしている自分を正当化するようになります。
自分が相手のためにすべきだと思った感情に背き、そうしている自分を正当化する。
それを「自己欺瞞」と呼びます。
自分を正当化するようになると「自分は悪くない」「相手が悪い」と思うようになります。
たとえば相手にすべき連絡を面倒くさいからという理由で怠ってしまった場合、「この人は面倒くさい人だからあまり関わりたくない」と思ったりします。
自分への感情に背くと、やがて周りの世界を、自分への裏切りを正当化する世界として見るようになります。
すると認知の歪みが起こりはじめます。
「自分は悪くない」「周りの人が自分に迷惑なことをしている」と思うと、「世界は自分に迷惑なもの」として見るようになります。
そのようにして箱に入ると、その箱を常に持ち歩き、箱に入ったまま過ごすようになります。
すると常に現実を見る目は歪められてしまいます。
「人が怖い」と思うのも、自分が箱に入っていて、「他人は自分を傷つけるもの」というフィルターを通して世の中を見るようになるからです。
自分が箱に入ると相手も箱に入り、お互いが恐れや恐怖の存在になりやすくなります。
これがあらゆる人間関係がこじれ、人間不信になる原因です。
そのようにこじれた結果、モラハラなどの問題にも発展しやすくなります。
箱に入るまでと入ってからの流れ(本書より抜粋)
- 自分が他人のためにすべきだと感じた事に背く行動を、自分への裏切りと呼ぶ
- 一旦自分の感情に背くと、周りの世界を、自分への裏切りを正当化する視点から見るようになる。
- 周りの世界を自分を正当化する視点から見るようになると、現実を見る目が歪められる。
- したがって、人は自分の感情に背いたときに、箱に入る。
- 時が経つにつれ、いくつかの箱を自分の性格とみなすようになり、それを持ち歩くようになる。
- 自分が箱の中に入ることによって、他の人たちをも箱の中に入れてしまう。
- 箱の中に入ると、お互いに相手をしてひどく扱い、お互いに自分を正当化する。共謀して、お互いに箱の中に入る口実を与え合う。
箱の中に入るときに、しても無駄なこと(本書より抜粋)
- 相手を変えようとすること
- 相手と全力で張り合うこと
- その状況から離れること
- コミュニケーションを取ろうとすること
- 新しいテクニックを使おうとすること
- 自分の行動を変えようとすること
箱からどのように出るか(本書より抜粋)
相手との関係性を改善したいなら、自分が箱から出た状態で、相手を一人の人間としてありのままを見る
知っておくべきこと(本書より抜粋)
- 自分への裏切りは、自己欺瞞へ、さらには箱へとつながっていく。
- 箱の中に入ると、業績向上に気持ちを集中することができなくなる。
- 自分が人にどのような影響を及ぼすか、成功できるかどうかは、すべて箱の外に出ているか否かにかかっている。
- 他の人々に抵抗するのをやめたとき、箱の外に出ることができる。
上記の原則を、本書では具体的なストーリーをまじえて一般の人にも分かりやすく解説されています。
本書を読んでの感想
家庭でも学校でも職場でも、私はいつも人間関係(コミュニケーション)の問題を抱えていました。
学校ではいじめに遭っていたので、どうして周りの皆は自分に辛く当たるのだろう、世界は恐ろしい人ばかりだ、と思っていました。
しかし本書を読んで、学校でいじめに遭っていた原因も、職場でいつも人間関係トラブルを抱えていた原因も分かりました。
親との関係がきっかけで私は物心ついた時から箱に入り、「人は自分を攻撃する存在だ」というフィルターを通して世の中を見るようになったからです。
無意識で人を恐れていると、それは非言語のメッセージとして周囲に伝わり、違和感となります。
私が周囲の人を信用できず、他人に心を開いていなから、攻撃の対象にされやすくなったのでしょう。
職場でも、私が箱に入っていたことから、多くの人に違和感を抱かせてしまっていたのだと思います。
現在はフリーランスで仕事をしているため、あらかじめ心地の良い人間関係を選ぶことができる状態です。
周囲の人に対しても防御的にならず、心地よい距離感を保ちながら、良い関係性を築けるようになりました。
「箱」についてもっと早くから知っていたら、少なくとも職場の人達とより良い関係性を築くことができたのではないかと思います。
小学校の授業にも取り入れてほしいぐらい大切な概念だと思いますので、お子様のいらっしゃる方は、ぜひお子様と一緒に読んでいただきたい本です。