南仏プロヴァンスの12ヶ月 ピーターメイル あらすじと感想 多少ネタバレあり パスティスが飲みたくなる

南仏ブームの火付け役となった世界的ベストセラー、ピーター・メイルの「南仏プロヴァンスの12ヶ月」をご紹介します。

私が南仏に本格的にハマり始めたのも、この本がきっかけでした。

もともとはイギリスの大手広告会社デイヴィッド・オグルヴィで働いていて、コピーライター、クリエイティブディレクターとして多忙な生活を送っていたピーター・メイル。

広告業界で成功した地位をかなぐり捨ててまで移住して手に入れた南仏プロヴァンスの魅力を、本書が伝えてくれます。

著者プロフィール

ピーター・メイル

1939年生まれ。英領西インド諸島にあるバルバドスの大学を卒業後、ロンドンの大手広告会社デイヴィッド・オグルヴィのコピーライターを経て、大手広告代理店BBDOのクリエイティブディレクターに出世する。業界の最先端で活躍し、ロンドンとニューヨークの間を頻繁に往復する多忙な生活が続いたが、あっさりとその地位を捨てる。

その後、貧困から脱出するために書いた子供向けの性教育本「ぼくどこからきたの?」が成功し、物書きとして生計を立てていくことを決意。

80年代半ば、旅行者として何度も訪れていた南仏プロヴァンスに移り住み、石造りの古い家を購入する。

89年、南仏での生活を描いたエッセイ「南仏プロヴァンスの12か月」がベストセラーとなり、南仏ブームの火付け役となった。

「南仏プロヴァンスの12ヶ月」のあらすじ

移り住んだ南仏で購入した石造りの家での生活。地元の人との関わり合いや、食文化、季節の移ろいがエッセイ形式で描かれています。

ここでは本書で描かれているひと月ごとのトピックをざっと取り上げてみます。

1月
凍てつくような寒さの中、イギリスから引っ越してきたばかりのピーター・メイル夫妻に、ご近所からこれでもかというほどのご馳走が振る舞われる。

2月
キッチンを改装し、暖房やテーブルを業者に注文。しかし思わぬハプニングの連続。ロンドンの友人からの宿泊したいとの連絡に春の訪れを感じ始める。

3月
自然の息吹を感じながらも、相変わらず時間を守らない職人たちにイライラ。リュベロン山に春の銃声が聞こえるようになり、トリュフ狩りへ出かける人も増える。

4月
ロンドンから友人がプロヴァンスの不動産を買いにやってくる。日曜日は朝8時から市場へ春の食材を買い出し。家にやってきた行商の絨毯屋に絨毯を買わされる。

5月
裏庭の空き地に生えている草を近所の友人にウサギの餌として譲る。家に保険をかけることを決める。山奥の僻地にある安くて驚くほど美味しい人気レストランを楽しむ。

6月
カヴァイヨンでアコーディオンコンテストが開催される。献血へ行き、車を走らせエクスアンプロヴァンスへ行ってカフェを梯子。熱気の中、職人たちが工事を進める。

7月
ヨーロッパ各地からプロヴァンスに旅行者が訪れ、マナーの悪さにうんざりする。友人とペタンク(プロヴァンスの伝統球技)の試合をする。

8月
家の大工事が始まる。山羊のレースのチケットを買って見物。ブール・トーナメント、驢馬レース、バーベキュー、共進会など8月のイベントが開催され、村が賑わう。

9月
夏が終わって一気に閑散とする。葡萄の収穫がはじまる。暖房の据付が完了。ワインの調査研究のためにジゴンダのシャトーを訪れる。

10月
再びキノコ狩りをする人が増え始める。電気メーターに蜂の巣ができてしまい、レモンを使って駆除する。大雨で土砂の積もった私道を整備する。

11月
地元のダンスパーティーへ参加。ミストラル(強風)による影響を受ける。モーサーヌのオリーブオイル工場を訪れる。

12月
クリスマスの準備をする。家の工事が予定よりも大幅に遅れているため、職人たちをあえて「工事完了を祝うクリスマスパーティー」へ招待し、工事を完了させる。

その他に地元に伝わる逸話や、伝統、蘊蓄などが描かれており、まるで南仏に移り住んだかのような気分になれます。

解説と感想(南仏へ行きたい方は必読)

本書を南仏へ行く前に一度読み、南仏を旅した後にも読み返してみました。

実際に南仏へ行ってみて、ピーター・メイルのイメージ通りだったことが嬉しかったです。

本書をあらかじめ読んでおくことで、南仏旅行はまるで答え合わせをしているようで、2倍楽しめました。

そして要所要所に出てくるパスティス(南仏マルセイユの食前酒)。

お酒の飲める方は、飲んでみたくなること間違いありません。

さすが広告コピーライターのピーター・メイル、私もまんまと彼の言葉のマジックにかかり、パスティスを注文してしまいました。

パスティスは独特のクセがある美味しさです。南仏の強い日差しの下で飲むとより美味しいでしょう。

南仏生活のリアルは本書をお読みいただくとして、私が感銘を受けたのは、著者ピーター・メイルの生き方です。

大手広告会社でコピーライターを経てディレクターとなり、多忙な日々を送った後に独立し、貧困生活を経て、ロンドンから田舎の南仏プロヴァンスに移住する、という人生の流れが、私自身も実はとても近しいからです。

広告業界での華々しい地位を手放した理由は、本人によると「この世界で生きるためには欠かせない情熱の衰えを意識して」とのこと。

そのピーター・メイルの生き方は、彼の書いた小説「プロヴァンスの贈り物」の主人公マックスにも通ずるものがあります。

映画「プロヴァンスの贈り物」 あらすじと感想(多少ネタバレあり)美しいプロヴァンスの魅力を堪能できる

 

文章表現を生業とする者として、自分が情熱を注げない生き方に耐えられないことに、強い共感を持ちました。

ピーター・メイルにとって、プロヴァンスでの生活には、日々発見の驚きがあり、生きる喜びがあります。日常の思い通りにならない厄介ごとでさえも楽しんでいます。

情熱を注げない日常を我慢するのではなく、それまで築き上げてきた地位や富を手放してまでも、表現者として、「夢を売る男」として、自分に正直に生きる。

その結果、本書が世界的ベストセラーになったのではないかと思います。

敷かれたレールから外れて、道なき道を生きることは、恐れが伴います。

多くの人が、無難な道を選ぶでしょう。

しかし、先の見えている人生に面白みはあるのでしょうか?

私も人生に迷った時は、ピーター・メイルのように好奇心と情熱を持てる道を歩みたい、そしてまた南仏に訪れて、美味しいパスティスと地元の料理を楽しみたいと思いました。

2018年にピーター・メイルさんはご逝去されました。たくさんの夢を見せてくれてありがとうございました。

 

 

Ayacoライター
アラフォー独身おひとり様女。10代の時、世界文学を読み漁るうちに、日本の学校教育で教わる生き方との矛盾を感じる。進路に悩み、高校の普通科を1年で中退。 通信制高校に編入し、同時に大検(現在の高卒認定資格)を取得して美大へ入学。在学中にフリーランスのグラフィックデザイナーとして起業。その後、Web制作会社でディレクターとして勤務後、大手広告会社のライターを経て2度目の起業。 30代半ばに、美大へ進学するきっかけとなった、印象派時代のフランスの画家達が過ごした聖地を旅する。 地方在住のアラフォーになり、コロナ禍をきっかけに、学生時代からの夢であった、知的探究心の向くままに世界の文学に触れる日々を過ごしている。 オフィシャルサイトはこちら
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アラフォー独身おひとり様女。10代の時、世界文学を読み漁るうちに、日本の学校教育で教わる生き方との矛盾を感じる。進路に悩み、高校の普通科を1年で中退。 通信制高校に編入し、同時に大検(現在の高卒認定資格)を取得して美大へ入学。在学中にフリーランスのグラフィックデザイナーとして起業。その後、Web制作会社でディレクターとして勤務後、大手広告会社のライターを経て2度目の起業。 30代半ばに、美大へ進学するきっかけとなった、印象派時代のフランスの画家達が過ごした聖地を旅する。 地方在住のアラフォーになり、コロナ禍をきっかけに、学生時代からの夢であった、知的探究心の向くままに世界の文学に触れる日々を過ごしている。 オフィシャルサイトはこちら